火鍋通りの物語
ちょっとしたお話を共有させてください。あ、ちなみにこのお話、今回の『スノウブレイク』とは一切関係ありませんからね。
ある街に、有名な「火鍋通り」がありました。その土地の特色から、通りの店はどこも「麻辣(マーラー)火鍋」を看板メニューにしていました。しかし、どこも似たような味で競争が激しくなると、店主たちは「差別化」を考え始めます。
次第に、通りには海鮮鍋、鶏白湯、キノコ鍋、トマト鍋といった新しい味が溢れかえりました。それが功を奏して、全国各地からいろんな食実たちが集まるようになったんです。
みんながこぞって新しい流行を追いかけた結果、皮肉なことに、麻辣火鍋で有名だったはずの通りから、本物の麻辣火鍋店がどんどん姿を消していきました。でも、誰もその「異常な傾向」には気づきませんでした。
そんなある日、一軒の新店がオープンします。周りの店とは違い、そこは**「ゴリゴリの正統派」な麻辣火鍋店**でした。
麻辣火鍋を愛する人なら分かりますよね。あの香りは、どこまでも漂っていくものです。新店が煮込むスープの香りに誘われて、通りがかりの食客たちは「そういえば、自分が本当に好きだったのはこの味だった」と思い出し、次々と店に吸い込まれていきました。
実際に食べてみると、味は本物、サービスも行き届いていて、その上お値段もリーズナブル。リピーターが増えるのは、当然の流れでした。
さて、この店が繁盛し始めると、通りの他の店主たちが「注目」し始めます。……と言っても、あまり良い意味ではありません。なぜそうなったのか? 理由はいくつかあります。
まず、サービスの質を上げるには、スタッフを増やし、きちんとした教育をしなければなりません。それは店にとって「コスト増」を意味します。
次に、ここは超人気グルメ街です。「映え」を意識した店なら、セットで4,500円くらいが相場でした。しかし、この新店は同じ内容のものを2,250円ほどで出してしまう。
「薄利多売」は新店が生き残るための戦略ですが、高い価格帯で商売をしてきた老舗たちからすれば、喉に刺さったトゲのように、ひどく目障りな存在だったのです。
本来、客にとっても業界にとっても、最も健全な競争とは「誰が一番旨いものを作るか」「誰が一番親切か」「誰が一番コスパが良いか」を競うことのはずです。
しかし現実は、大多数の店主たちが「あの新店さえ消えてくれれば、自分たちの地位を守れるのに」と願っていました。彼らは一部の客が求めている切実な声から目を背け、あるいはもう麻辣の作り方を忘れてしまったのか、はたまたコストをかけるのが嫌だったのかもしれません。
想像してみてください。他の店から目の敵にされたこの麻辣火鍋店は、これからどうなるでしょうか? 潰れてしまうでしょうか?
……おそらく、そうはならないでしょう。客は自分が何を食べたいのかを、ちゃんと知っているからです。店を攻撃することはできても、人の「好き」という気持ちまでは、誰もコントロールできません。
この物語の結末は決まっておらず、まだ終わってもいません。
今ここにいる一人ひとりが、この物語の結末を書き換えることができるんです。自分の影響力を決して過小評価しないでください。
筆は、いつだって皆さんの手の中にあるのですから。